たかはし雅成

 こんにちは。公明党の高橋雅成です。
 今から十五年以上前のことになるのですが、博多区に住む当時十八歳の青年と私は知り合いになりました。その青年は中学校からシンナーを吸い続けてシンナーの依存症になっておりました。無気力な毎日から抜け出そうと本人ももがいておりまして、私も力になろうと精いっぱい励ましておりました。何カ月かたってシンナーをやめて仕事を見つけようと意欲も出ていたんですけれども、そうしたやさき、彼が自宅で首をつって自殺したという話を聞きました。言葉もないくらいショックを受けました。同時に、私自身の力不足はともかくとして、なぜ彼を救うことができなかったんだろうということを何度も自問しました。薬物依存の方を救うためには家族や友人はもちろんですけれども、ボランティア、病院、行政、学校の先生、警察などもっと多くの支えが必要だったんだなということに後から気がつきました。今議会の一般質問を通告した七日、全くの偶然ですけれども、新聞各紙夕刊に薬物に関するニュースがたくさん掲載されました。福岡市中央区の大手予備校と専修学校の男子学生ら五人が大麻取締法違反の疑いで逮捕され、九州大学の男子学生ら二人が書類送検されました。七人とも容疑を認め、受験勉強のストレスから逃れたかったなどと供述しているという報道でした。また、同じ紙面に発芽防止の熱処理をしていない大麻の種を輸入雑貨店などに卸したとして、神奈川県警が大麻取締法違反幇助容疑で雑貨店運営会社など四カ所を家宅捜索したという報道がありました。さらに、同じ紙面に仙台市宮城野区のマンションで六月、スプレー缶のガスを吸引するガスパン遊びをしていた中学生六人が重軽傷を負った爆発事故で、宮城県警は、たばこに火をつけてガスに引火、爆発を招いたとして過失激発物破裂と窃盗の疑いで中学三年の男子生徒を書類送検したという報道もありました。大麻をめぐっては、関東学院大学三年のラグビー部員がマンションで大麻を栽培し、大麻取締法違反の罪で起訴されたばかりです。福岡でも過去、九州産業大学の学生や卒業生計十四人が大麻を栽培、売買していたとして逮捕されました。同じ年、九州大学の大学院生が自宅で大麻を栽培していたとして逮捕されています。大麻の違法な栽培、売買で若者が摘発される事件が相次いでおり、薬物の乱用が若者の間でひそかに拡大していることが懸念されております。そこで、薬物の乱用防止、ひいては薬物依存の防止について以下、質問いたします。
 依存性がある薬物の乱用は、終戦直後の覚せい剤の第一次流行に始まります。その後、法律の改正ごとに流行はおさまるのですが、一九六〇年代には睡眠薬やシンナーが若者の間で流行し、また七〇年代には再び覚せい剤乱用が問題になりました。次いで九八年以降は、第三次覚せい剤乱用期と言われるほどに流行して今日に至っています。最近の傾向として指摘されるのは、薬物乱用者の低年齢化です。中学生や高校生という十代半ばの子供たちが薬物に手を染めてしまっています。薬物としては、シンナーを初め覚せい剤や大麻、さらには精神安定剤や睡眠剤などが挙げられ、最近は脱法ドラッグも問題になっていることは周知のとおりです。
 この問題に取り組んでいる専門家の間でよく言われる言葉があるそうです。それは、大人の薬物乱用者は怖くない。しょせんは点であり、余り汚染が広がらない。しかし、若者の薬物乱用は怖い。その若者の周辺を汚染し尽くすということです。冒頭に挙げた大麻の逮捕者もそうですが、まさに若者の薬物乱用は伝染病のように広がる傾向があります。福岡県においては、シンナーや接着剤、ボンドなどの有機溶剤を乱用して検挙、補導された少年の人数は、平成十八年で二百五十六人。七年連続して全国ワーストワンとなっています。こうしたことから、県、県警、県教育庁においてさまざまな対策がとられ、県議会においても真剣な議論が種々なされてきました。政府の薬物乱用防止五カ年戦略を受けて、本県において平成十年から福岡県薬物乱用防止五カ年戦略が実施され、さらに平成十五年の九月、新五カ年戦略が策定されております。この新五カ年戦略の終結まで残すところ一年でありますが、今日までに同戦略の実効性はどうであったか。その評価についてまず伺います。
 そして、新戦略が終了後、新新五カ年戦略のようなものを策定する予定はあるのか、あるとすれば、現在の戦略からどのように発展、継続させるおつもりなのか知事の御所見を伺います。
 次に、小中高校での薬物乱用防止教室について教育長に伺います。まず、同教室の実施率はどうなっているか。小中高校別にお示しください。同教室での薬物乱用防止教育の実態について、何年生を対象に実施しているのか、年間どれくらいの時間を費やしているのか、内容はおおむねどんな内容なのか、県警や、NA、ダルクなどNPO法人との協力体制についてお答えください。
 また、同教室において、教師自身の薬物乱用や薬物依存症に対する認識不足がしばしば指摘され、教師の中に薬物問題についてのスペシャリストを養成すべきだとの声があります。この点、静岡県教育委員会は、薬物乱用防止アドバイザー養成講座を開き、県内各地の小中高校の養護教諭、生徒指導担当教諭を集め、薬物についての基礎知識、予防教育の実際、関連機関視察を通しての実際の対応研修などを実施しているそうです。本県においても、教師の中に薬物乱用防止スペシャリストの養成を行うべきだと考えますが、教育長の見解を伺います。
 次に、平成十七年の十二月議会において、我が会派の田中正勝議員が、「次から次へと出現する乱用薬物に対し、青少年一人一人がしっかりと拒絶する強い心を育てるためにも……正しい薬の知識を身につけさせる教育、いわば薬育」が必要と考えると指摘したことに対し、森山教育長は「有害薬物の乱用を防止するためには、その基盤として薬全体についての正しい使い方とか怖さなどについて学習するということが重要」とした上で、「国におきましては、児童生徒を対象にした医薬品の正しい使い方に関する指導方法等についての研究が進められておりまして、今後こうした動向を踏まえまして、本県におきましても学校薬剤師など専門家の協力を得ながら医薬品の正しい使い方に関する教育の充実を図ってまいりたい」と答弁しております。その後、既に二年を経過しておりますが、どのような状況になっているのか、お答え願います。
 警察本部長に伺います。シンナー等乱用少年の検挙、補導件数について、今から十数年前までは全国的に福岡県よりも二倍も三倍もひどい県もあったが、それがこの十数年でかなりおさまってきた。神奈川県などは福岡県の二倍近く、二千ぐらいあったが、現在では数十件と少なくなっているということを聞きました。その一方で、神奈川県ではMDMAなどの脱法ドラッグが広がっているという背景もあると聞いております。福岡県において、シンナー乱用が減っているが依然として全国的にはワーストワンです。その原因、背景についてどのように分析していますか。また、シンナー、覚せい剤、麻薬など含め、薬物全体での乱用少年の検挙、補導件数はどれくらいで、全国で比較するとどの位置にあるのでしょうか。
 また、県警では薬物の恐ろしさを知ってもらうため、学校の薬物乱用防止教室や地域のキャンペーンなどに薬物乱用防止広報車DAP──通称ダップと言うそうですけれども──を派遣しておりますが、このDAP派遣の実績について教えてください。
 次に、薬物乱用、依存症の相談、治療の体制について伺います。検挙、補導された薬物乱用の若者たちは、学校や家庭、警察や司法機関で指導されますが、依存症という病気の治療はほとんど受けていないという指摘があります。ある専門家によりますと、薬物依存症を治療する医療機関や更生施設は、アルコールに関してのものを除いて、日本にはほとんどないということです。医療機関は薬物の解毒、断薬の動機づけ、家族への指導、更生プログラムなどがきちんとそろっていることが必要とのことです。また、更生施設については公的なものは存在せず、そのかわりに民間のNA(ナルコティックス・アノニマス)、マック、ダルク(ドラッグ・アディクション・リハビリテーション・センター)が精力的に活動しています。
 そこで、薬物依存症に関し、県の精神保健福祉センターはどのような役割を果たしているのか伺います。同センターを初め保健所、児童相談所、福祉事務所等に年間どれくらいの薬物依存症の患者や家族からの相談が寄せられているのかお答えください。
 ところで、佐賀県の肥前精神医療センターは、さきに挙げた数少ない薬物依存症を治療する医療機関です。平成六年にそれまでのアルコール依存症専門病棟をアルコール・薬物依存症専門病棟に改め、今日に至っています。外来プログラム、入院プログラム、家族のケア、自助グループとの協力体制などを完備するとともに、中高生や教職員を対象にした薬物乱用防止教育も行っています。シンナー乱用の若者ワーストワンの本県には、このような医療施設はあるのか知事に伺います。若者のこれからの人生を開くためにも、こうした医療施設を本県として整備する必要性を感じるものですが、知事の御所見を伺います。

 以上で一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

後藤副議長

 麻生知事。

*知事答弁

麻生知事

 薬物乱用防止新五カ年戦略の評価と今後の取り組みの方針についてであります。県では、平成十五年に新五カ年戦略を策定いたしました。そして、取り締まり機関の連携強化、学校におきます防止教育の充実、地域におきます啓発活動の実施、精神保健福祉センターの相談窓口の充実などの対策を進めてまいりました。このような取り組みの効果もあり、ほぼ横ばいで推移しておりましたシンナー及び覚せい剤乱用少年の検挙、補導件数でございますが、平成十七年から減少に転じ始めておりまして、平成十八年には新五カ年戦略を始める前の六百五十一人から二百九十人に減少をいたしております。今後、これまでの取り組みの成果を総括いたしまして、新たな薬物乱用防止戦略を策定、実施する考えでございます。
 薬物依存症に関します精神保健福祉センターの役割についてでございます。精神保健福祉センターのほうでは、薬物依存に関します相談に応じますとともに、薬物依存者を抱えます家族を支援するための教室の開催、県や市町村、学校の相談従事者に対します専門的な研修を実施いたしております。また、平成十八年度におきましては、精神保健福祉センターや保健福祉環境事務所などの県の機関に寄せられました薬物依存に関します相談でございますけれども、これは六百三十一件でございます。

 薬物依存症を治療いたします医療機関についてでございますが、まず県内では県立太宰府病院のほかに複数の民間の精神科病院におきまして薬物依存症に関します専門的な治療を行っております。さらに、県としましては、こうした専門医療機関や薬物依存患者を支援する民間団体とも協力しながら、薬物依存患者の社会復帰を支援してまいりたいと考えております。

後藤副議長

 森山教育長。

*教育長答弁

森山教育長

 まず、薬物乱用防止教室の実施状況等についてでございます。実施率は小学校が六六・四%、中学校が七九・一%、高等学校は一〇〇%となっております。実施学年につきましては、小学校では五、六年生が中心でありますが、中学校の八割、高等学校はほぼ全校が全学年を対象に少なくとも年一回以上実施をいたしております。また、実施に当たりましては、関係機関や団体と連携をいたしまして警察官や薬剤師などの外部講師や教職員等による講話あるいは実験、さらには児童生徒の調べ学習の発表などさまざまな取り組みを学校教育活動全体を通じて、行っておるところでございます。
 次に、教員の指導力の向上についてでございます。本県では、従来から学校におきまして組織的に取り組むために薬物に関する専門的な知識を有する教諭及び養護教諭の養成を図っておるところでございます。具体的には全国に先駆けまして平成十三年度から参加体験型学習指導法を取り入れた研修会を実施するなど、指導力の向上に努めておるところでございます。また、保健福祉部と連携をいたしまして、本年度から新たに薬物乱用防止教室や講習会の講師等を対象とした研修会に教員が参加できるようにいたしたところでございます。今後とも、このような取り組みを通しまして、教員の一層の指導力の向上に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、医薬品の正しい使い方に関する指導についてでございます。薬物乱用防止教育の充実を図りますためには、その基盤といたしまして医薬品など広く薬全体についての学習が極めて重要であります。このため、学校におきましては、従来から保健体育等の学習を通じまして、薬の種類や正しい使い方など薬物乱用の害と健康について指導しておるところでございます。また、国におきましても、指導の充実を図るため、昨年度は子供向けのパンフレットを配付いたしまして、本年度は教師向けのパンフレットをすべての学校に配付する計画になっております。今後は、これらの資料を活用いたしまして、さらなる指導の充実に努めてまいりたいと考えております。

後藤副議長

 殿川警察本部長。

*警察本部長答弁

殿川警察本部長

 薬物乱用少年対策についてお答えいたします。まず、平成十八年中における薬物乱用少年につきましては、シンナー二百五十六人全国第一位、覚せい剤三十四人全国第二位、大麻十七人全国第四位の検挙、補導をいたしております。このうちシンナー乱用少年の検挙、補導人員は、過去十年間では平成十五年の八百十四人がピークで、以降本年まで減少しておりますが、本年十月末現在では百六十六人といまだ高い数字を示しております。この原因、背景につきましては、少年に薬物の危険性、有害性についての正しい知識が欠けていること、乱用少年同士での譲渡事案が後を絶たないことを初め、暴力団等が資金源獲得の一手段としてシンナーを密売していることなどが考えられるところであります。

 次に、薬物乱用防止広報車の派遣実績についてであります。県警察では、平成十一年に導入しました広報車通称ダップ一台のほか、平成十七年からは北九州市の協力を得て同市が導入した薬物乱用防止広報車一台の計二台を運用して、本年は十月末現在で七十七回派遣し、小中高校への薬物乱用防止教室や各種キャンペーンを行っているところであります。なお、このほか少年サポートセンターや警察署においても年間約四百回の薬物乱用防止教室等を開催しているところであります。県警察といたしましては、薬物乱用防止のため、今後とも関係機関、団体と連携の上、乱用少年の早期発見、補導活動、薬物乱用の危険性、有害性の広報、啓発活動の推進を初め、密売等供給源の取り締まりについても強力に取り組んでまいる所存であります。

後藤副議長

 高橋雅成君。

たかはし雅成

 御答弁を聞いておりましたら、非常に福岡県も教育庁もそれから警察も頑張っているんだなというのはよくわかるんですけれども、なぜそれなのに一位なのかが私にはよくわかりません。
 薬物依存症は治らないとお医者さんは言うそうです。医師は、治ったというふうに言わずに、回復し続けるというふうに言うんだそうです。それはなぜかといいますと、表面的には治ったように見えていても心の中は全く違うからだということです。内心では薬物を使いたいというその気持ちがずっと続いているわけです。一度依存症になった人は生涯その気持ち、誘惑と闘い続けなければならない、それが薬物の怖さの一面だということでありました。
 そこで、この依存症を治療するという考え方が県のほうに、今までどうだったのかな、あったのかなというような気がしてしようがありません。大きな施設をつくるとかというようなことを求めるわけでは決してありませんけれども、専門医療機関との支援体制ですか、連絡体制とかいうのをきちんとやっぱりつくるべきじゃないかなというふうに思いました。要するに、依存症になってもどこに行けばいいのかわからないというのが現状ではないかと思います。検討していただきたいというふうに思います。
 それと、教育長のほうの薬物乱用防止教室ですけれども、細かい数字いただきました。外部講師の招聘をしているところが非常に多いということがわかりました。小学校でも中学校でも高校でも五〇%以上のところが外部講師を招いて乱用防止教室を開いております。外部講師の内訳は、警察職員ですとか学校薬剤師などが多いわけですけれども、警察が一番多いわけですけれども、先ほどから申しておりますダルクを招聘しているところが、多くありません、少ないです。ある方の声ですけれども、実際の薬物の怖さとか薬物が人生をどのようにして破壊していくかということを、ダルクの方の話を聞いてよくわかった、きちんと理解できた、実際の体験者の話はやっぱり重みが違うというふうに言っております。逆に、警察がだめとかいう意味では決してありませんけれども、警察の場合、検挙数とか覚せい剤の怖さを抽象的に語っているだけで実感が伝わってこなかったという声も、そういうケースもあるということでした。ダルクなどの体験者の活用をもっと図るべきだと思いますので、これも要望しておきます。
 それから、警察のほうはダップがかなりの数出ておりますけれども、ただ薬物乱用防止教室の実施校八百九十四校に比べたら非常にやっぱり少ないなというふうな印象を受けました。ダップが活用できない、人手不足とかいうような面もひょっとしたらあるかもしれませんけれども、もっともっと活用していただきたいと、以上三点を要望しまして質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)